KGW magazine

リモートワークが変えたもの

  リモートワークという言葉がコロナウィルスをきっかけに流行してから1年半近く経とうとしています。 私(筆者)ももれなく流行に巻き込まれている一人であり、在宅勤務が当たり前の生活となっています。1年半前から今まで出社した回数は片手で数えられるぐらいしかありません。   リモートワークを前提とした働き方になってから、環境の変化に対応すべく日々改善を繰り返しながら仕事をしています。同じ様に世の中の多くのビジネスマンがIT化と共にやってくる大きな環境変化の波に試行錯誤しているのではと思います。   本記事ではリモートワークによってビジネスシーンに今どのような環境の変化が起きているのを言語化しつつ、対処法についても自身の経験を交えながら触れたいと思います。   リモートワークがビジネスにもたらす環境変化と対処法 1. 仕事とプライベートの曖昧化 通勤がどれほどビジネスマンの仕事のスイッチだったが良くわかります。行きの電車でニュースを眺めて仕事のスイッチをONにし、帰りの電車はスマホで娯楽を眺めスイッチをOFFにする。リモートワークでは朝起きて直ぐに仕事に取り掛かることができ、夜は仕事の辞め時がわかりません。効率化すると思われていた仕事時間は、自分で線引きをしないと結果として仕事がプライベートをどんどん飲み込んでいきます。調査ではリモートワークにより通常の勤務よりも長時間労働になることがあったと回答した人が51.5%に及んでいます。 (テレワークに関する調査2020)   対処法 意識的に時間の区切りを付ける。 私は朝の習慣を取り入れることで物理的に時間の区切りを作るようにしています。朝起きたらすぐに寝間着から着替える、そして20分程度散歩がてら近くのコーヒーを買いにいくことを習慣にしました。肩甲骨を大きめに動かしながら歩き、コーヒーで目を目覚めさせてから仕事に取り組むと集中力上がります。それ以外にもジムやマッサージなどのメンテナンスの時間を固定していれることで習慣化することも効果的だと思います。   2.人間関係の希薄化 人間関係の構築に必要なものは、従来「無駄」だと考えられていた時間であったと思い知りました。会議の人数が揃うまでの雑談。仕事帰りでエレベーターが一緒になった同僚との会話。オフィスで身に着けている服や小物から始まる趣味の会話。偶然出会って近況を報告しあう同期。これらの従来大切だと思われていなかった時間で、どれほどの心理的障壁が取り除かれ、仕事が円滑に進むのを助けていたのかと実感します。 対処法 関係作りのための時間を意図的に作る。 同僚や一緒に働く人と話す時間を作り、業務の話やプライベートな話をする時間を自ら積極的に作ることです。またあなたが部下を持つ立場ならそのような場を設けてあげることが重要です。きっかけはなんでも良いと思いますが、私の場合はプロジェクトメンバーと週一回オンラインでのランチ会を設定し、任意参加で業務やプライベートの話をする場を設けています。チームの会話量や仕事の頼みやすさが格段に上がりました。   3.成果主義の浸透 リモートワークによって仕事のプロセスが見えづらくなりました。朝早くから夜遅くまで仕事を頑張る姿や、汗を流して人と交渉する姿が評価に与える影響は極端に少なくなり、成果だけが強調されるようになっています。これ自体は悪いことではありませんが、変化を認識しておく必要があると思います。   対処法 直接的な対処法はありませんが、成果を出すための環境投資は怠らないというのは重要だと思います。PC、デスク、チェアーなどパフォーマンスを出すための設備にはお金を惜しまないことです。オフィスで使っていた椅子を買おうと調べたら数万円するものであることがわかり、どれだけオフィスが仕事に最適化されていた環境か思い知りました。しかし、パフォーマンスを出すための環境投資は惜しまず取り組むべきだと思います。  ...

サステナビリティの認証規格

世界中でサステナビリティの取り組みが進む中で、その基準が一定以上であることを保証する認証規格があるのをご存知でしょうか。   本記事ではアパレルと関連するものを中心にサステナビリティの認証規格を紹介していきます。   Global Organic Textile Standard (GOTS) 繊維の原料の70%以上がオーガニック繊維であることに加えて、繊維の調達・製造・梱包・流通に至るサプライチェーンにおいて環境的にも社会的にも基準を満たしていることを証明します。いくつかの具体的な基準の例を紹介します。   生産過程において環境への配慮や廃水に関する基準を設けていること 環境に危険を及ぼす化学物質をしようしていないこと 児童労働を使用しないこと 差別が無いこと いかなるハラスメントも存在しないこと 労働時間が適切であること   この認証がある製品は、製品そのものだけでなくその生産過程においてもサステナブルであることが保証されています。 (出典 - https://global-standard.org/)   GOTSを取得している企業の例 Nudie Jeans 天衣無縫   OEKO-TEX (エコテックス)...

禅と武士とスティーブ・ジョブズ

  「禅」とは心を静かに保っている状態を指す言葉であり、禅を通して悟りの境地を目指す仏教の修行の一つです。インド生まれの達磨(だるま)が中国に渡って禅の思想を確立し、奈良時代から平安時代に日本に持ち込まれたとされています。   禅は坐禅と瞑想を持って体現されます。 坐禅 あぐらをかき姿勢を正して精神統一をすること 瞑想 心を静めて無心になること   別の仏教の宗派である浄土宗や日蓮宗が念仏を唱えることで極楽浄土にいけるという教えであるのに対し、臨済宗や曹洞宗の禅を通じて悟りを開く教えは、文字や言葉ではなく禅を通じて自身の心の中で悟りを理解することに重きを置いています。   達磨僧が残した名句として「不立文字」(ふりゅうもんじ)があります。これは悟りは文字や言葉で表すことができないものであるという言葉です。念仏や経典によって教えられるものではなく、禅を実践していく中で体得していくものであるということです。坐禅と瞑想を繰り返し重ね、自問自答を重ねることで悟りの境地に達することができるのです。   禅の修行方法 禅の修行は生活の全てに至ると言われています。大事なのは心のあり方であり、座禅そのものを修行と捉えるのではなく、自分の心と向き合いながら行う全ての行動が修行であるという考え方です。例として代表的な修行生活の一日を具体的に紹介したいと思います。 3時 起床 暁天坐禅(朝の座禅)を40分程度行う 5時 読経 7時 朝食 お粥などの質素な食事 8時 掃除 10時 座禅と読経 12時 中食 麦飯に味噌汁、漬物、おかず一品。支給された食べ物の一部を外に設置された生飯台に置き鳥獣や無縁仏に分け与える。生飯(さば)という作法 13時 掃除と座禅 16時 読経 17時 薬石(しょうじき=夕食) 噌汁、漬物におかずが二品 19時 夜坐 2時間程度の座禅 21時 就寝  禅の修行は座禅をする時間以外の食事や掃除、就寝に至るまで作法があり修行の一部とみなされています。朝から晩まで己の心と向き合い、修行を長い年月繰り返すことで悟りに至るのです。   武士に愛された禅 戦乱の世において武士は常に生きるか死ぬかの戦いの中に身を置いてきました。死が身近にある武士にとって、禅を通して心を整えることは重要なメンタルコントロールの一つでした。戦いに生き残るために日々剣技を磨くのと同時に、己の心の鍛錬として禅の修行を取り入れていました。...

フードロスからフードシェアへ

フードロス(食品廃棄)は世界規模で深刻な問題になっており、世界では年間約13億トンもの食品が廃棄されています。13億トンと言われるとピンと来ない数字ですが、日本では年間約612万トンが廃棄されており、その量は東京ドーム約5杯分に相当します。(農林水産省調査)   フードロスがもたらす問題   フードロスによって引き起こされる問題は大きく2つあります。   1. 食糧不足 今現在でも先進国を中心に大量のフードロスが起きている一方、発展途上国では食料が行き渡らず貧困を抱えている人々が約8億人も存在しています。世界的に見ると人口は増加し続けており将来的にもこのトレンドはある程度続くと予測されていすが、フードロスの問題を放置し続けるということは、食料不足を抱える人々を増やすことに繋がります。   2. 環境負荷 捨てられる食材は処理場に運ばれ可燃ゴミとして処理されますが、処理場までの運搬と焼却で多くの温室効果ガスを排出し、埋め立てにおいても環境負荷を生み出します。温室効果ガスの排出量の1位は中国、2位はアメリカですが、世界の食品廃棄から生まれる温室効果ガスは第3位に相当する量になります。 (出典 - https://olioex.com/food-waste/food-waste-facts/)   フードロスを無くすために   我々がこの問題を解決するためにすべきことは、日々の生活で食料廃棄をなるべく出さないように気を付けることです。必要以上の量を買わない。賞味期限の管理を徹底する。食材の食べられる部分は極力捨てない。などを意識しながら日々の生活を送ることが大事です。   しかし、家庭でのフードロスを完全に無くすことは難しいでしょう。そのような問題を解決するのがフードシェアサービスです。   ■家庭のフードロスを削減する 「OLIO」 (出典 - https://jp.techcrunch.com/2018/07/12/2018-07-11-olio/)   OLIOは家庭で廃棄される食材をユーザー同士でシェアできるサービスです。世界に500万人のユーザーが存在するイギリス発のアプリで、登録者は無料でこのアプリを使うことができます。...

苔のむすまで -環境と心への影響-

苔大国、ニッポン 日本は年間を通して降水量が多く、湿度が高いため苔が非常に育ちやすい国です。また南北に広がる土地が生態系にバリエーションを持たせるため、日本で自生している苔はおおよそ1,800種類以上になると言われています。   苔の歴史は長く古来より苔は日本人から愛されてきました。日本の国歌にも入る「苔のむすまで」は苔が生(む)して生い茂るまでに長い時間がかかることから、「悠久」を表現しています。長い時間をかけてゆっくりと成長する様や、決して派手ではないものに意味を見出す日本人の美意識「わびさび」を感じ取ることができます。悠久の時を表す苔は同時に「古びて朽ちたもの」を連想させます。苔が生い茂るほど手が加えられず、死にありのままの自然を「美しい」と捉える心も日本人ならではだと言えます。   苔寺として有名なのが京都にある西芳寺です。西芳寺は庭だけではなく境内一面を苔が覆い、見るものを魅了させます。全国的にも苔は日本庭園において欠かせないものとして存在感を放っています。苔は存在そもののが時の流れを慎ましく・美しく語るため、日本庭園の表現に奥行きを持たせることができます。 (出典 - http://saihoji-kokedera.com/information.html)   苔の生態 苔は独特な生態を持っています。苔は植物でありながら根から水や養分を取り入れる構造はありません。苔の持つ根は「仮根」と呼ばれ、身体を支えるためだけに存在しています。日光や空気・水から直接栄養を取り込み成長します。湿気を好むため水の近くや森の中で多くみることができます。根から栄養を吸収しているわけではないため、土の上に根を張る必要はなく、石や木そして人工物にも根を張ります。   苔は大きく別けて2種類に分類されます。   蘚類 (せんるい) 直立型で細くとがったものが多い。見た目の特徴は、茎葉体(けいようたい)と呼ばれる草体が葉と茎に分かれており、樹木を思わせる形をしています。スギゴケ・タマゴケなどに代表され、盆栽の下草によく使われるのはこの形態です。 苔類(たいるい) 平たく這うように広がった見た目が多い。葉状体(ようじょうたい)と呼ばれる草体が葉と茎に分かれていないものです。ジャゴケ・ゼニゴケなどに代表され、見た目が嫌われることも多く盆栽や観賞用に使われることは非常に少ないです。地表をすき間なく覆ってしまうため、土の通気性が悪くなるというデメリットもあります。 環境への効果 苔は観賞としてだけではなく、環境への効果も非常に期待されている生物です。   温室効果ガス蓄積能力 普通の植物はその生命を終えると、微生物によって分解され自身の体に含まれれる炭素はCO2として大気中に放出されます。しかし、苔が生息する湿度が非常に高い場所では酸素を得にくいため微生物の活動が弱まります。結果として苔の内部にある炭素はそのまま留まり、大地に蓄積され泥炭として何千年という長い期間炭素を蓄積していきます。調査によるとミズゴケの仲間が多数生息している湿原地帯には約6,000ギガトンもの炭素が溜め込まれていることが分かっています。これは大気中に存在しているCO2の炭素量とほぼ同じ量です。 断熱効果 苔はスポンジ状の組織で構成されるため非常に高い貯水能力を持っており、自重の10~20倍の量の水を貯水できるとされています。加えて土壌と程よい隙間が生まれるように成長するため、空気の層ができ断熱効果が非常に高い生物です。 これらの特性を生かして、苔は温暖化対策として都市部においても活用されています。屋上のを苔によって緑化し断熱効果を生み出し、室内温度の変動を抑え、冷暖房の使用による消費電力やコストの削減に繋がっています。苔は水分と太陽があれば生息する事ができ、過酷な環境でも耐えられる植物でもあることからも注目されています。 苔はしばしば環境指標としても機能を発揮します。都市部に植えられた苔は大気や雨などから養分を直接吸収することになるため周辺環境の影響を強く受けます。そのため苔の汚染度合いで周辺環境がどれほど健康かを測定することができると言われています。  ...

サウナとライフスタイル

    昨今のサウナの在り方は従来のものと大きく変わってきています。   「年配の方が汗をかていスッキリする場所」というイメージが強かった従来と比べて、現代では20〜30代の若い世代にも広まり、一つのライフスタイルとして定着しつつあります。同時に「汗をかいてスッキリする」という効能が科学的に説明されるようになり、多くの人に有用なものとして理解されるようになっています。 今回はサウナの効能に触れつつ、なぜ現代人にサウナが広く受け入れられ、ライフスタイルとしてのあり方を確立しているのかについて考えていきます。   サウナの効能 ① 疲労回復 サウナ室はおおよそ100度前後の温度になります。高温下に身を置くことで、心拍数が高まり全身の血流が通常の2倍程度まで上昇し、身体に必要な酸素や酵素が活発に供給される状態になることで、疲労回復に繋がると考えられています。   ② 肌の健康促進 心拍数の高まりに応じて発汗作用が促されることで、肌の老廃物が排出され肌の健康を整える効果が期待されています。   ③ 自律神経の調整 下記ステップを3セット繰り返し実施することが理想的なサウナの入り方とされています。 サウナ(数分) 水風呂(1分弱) 休憩(数分) それは、サウナの熱で拡張された血管を水風呂によって急激に引き締めることで、交感神経を刺激し自律神経の調整能力を高めストレス解消に役立ちます。俗にいう「ととのう」という状態はこの自律神経が調整されている状態を指す場合が多いようです。   ④ 睡眠の質改善 通常体内温度が下がり始めると、身体と脳が入眠しやくすなると言われています。サウナによって身体の芯を十分に温めてから冷ますことで睡眠に入りやすくなり、深い睡眠時間が長く取れるという効果があげられます。   このようにサウナは身体と心の両方に良い効果を期待できるという点が非常に優れています。 また、従来のサウナが「ドライサウナ」と呼ばれるのに対し、昨今では「フィンランドサウナ」と言われるロウリュ(熱くなった石に水を注いで蒸気を発生させる行為)を前提とした、温度が低く湿度が高いサウナが普及してきています。フィンランドサウナはドライサウナと比べ直接的な身体への刺激が少なく、リラックスして過ごすことができるようになっています。そのため若者から年配まで、またドライサウナが苦手な人もサウナの効能を実感しやすくなっています。...