サウナとライフスタイル

 

 

昨今のサウナの在り方は従来のものと大きく変わってきています。

 

「年配の方が汗をかていスッキリする場所」というイメージが強かった従来と比べて、現代では20〜30代の若い世代にも広まり、一つのライフスタイルとして定着しつつあります。同時に「汗をかいてスッキリする」という効能が科学的に説明されるようになり、多くの人に有用なものとして理解されるようになっています。

今回はサウナの効能に触れつつ、なぜ現代人にサウナが広く受け入れられ、ライフスタイルとしてのあり方を確立しているのかについて考えていきます。

 

サウナの効能

① 疲労回復

サウナ室はおおよそ100度前後の温度になります。高温下に身を置くことで、心拍数が高まり全身の血流が通常の2倍程度まで上昇し、身体に必要な酸素や酵素が活発に供給される状態になることで、疲労回復に繋がると考えられています。

 

② 肌の健康促進

心拍数の高まりに応じて発汗作用が促されることで、肌の老廃物が排出され肌の健康を整える効果が期待されています。

 

③ 自律神経の調整

下記ステップを3セット繰り返し実施することが理想的なサウナの入り方とされています。

  1. サウナ(数分)

  2. 水風呂(1分弱)

  3. 休憩(数分)

それは、サウナの熱で拡張された血管を水風呂によって急激に引き締めることで、交感神経を刺激し自律神経の調整能力を高めストレス解消に役立ちます。俗にいう「ととのう」という状態はこの自律神経が調整されている状態を指す場合が多いようです。

 

④ 睡眠の質改善

通常体内温度が下がり始めると、身体と脳が入眠しやくすなると言われています。サウナによって身体の芯を十分に温めてから冷ますことで睡眠に入りやすくなり、深い睡眠時間が長く取れるという効果があげられます。

 

このようにサウナは身体と心の両方に良い効果を期待できるという点が非常に優れています。

また、従来のサウナが「ドライサウナ」と呼ばれるのに対し、昨今では「フィンランドサウナ」と言われるロウリュ(熱くなった石に水を注いで蒸気を発生させる行為)を前提とした、温度が低く湿度が高いサウナが普及してきています。フィンランドサウナはドライサウナと比べ直接的な身体への刺激が少なく、リラックスして過ごすことができるようになっています。そのため若者から年配まで、またドライサウナが苦手な人もサウナの効能を実感しやすくなっています。

 

ドライサウナ

温度:80〜100℃ 程度

湿度:10〜20% 程度

高温低湿

 

フィンランドサウナ

温度:70〜80℃ 程度

湿度:50〜70% 程度

低温高湿

サウナの普及に見るライフスタイルの変化

サウナはストレス社会を生きる現代人に広く普及し、若い世代にも愛されるものとなっています。温浴施設は従来の身体を清潔にする場所の意味合いから、リラクゼーションを追及する場として生まれ変わって来ています。これは単にサウナの効能だけではなく時代背景が強く影響していると考えられます。

 

① SNSの普及

能動的に調べないと情報を入手できない時代から、SNSの普及により受動的に情報が流れ込んでくる時代になりました。知りたくない大量の情報を受信しては、他人と自分を比較する場面が多くなり、結果として憂鬱になる場合があります。サウナのようなインターネットから切り離された場所を求めている人は多くなるのは理解できます。

 

② 経済成長の停滞

IT化が進み世の中全体が効率的になる一方、増えるはずの自由時間は仕事で埋められています。少なくとも好景気とは言えない世の中で働いても、見合った報酬は貰えません。仕事以外の時間を充実させたいと思うのは当然の流れに思えます。

 

③ オフラインの価値拡大

仕事も遊びもオンライン化し、いつでもどこでも知り合いと繋がれるようになっている中、バックグラウンドや年代も多様な個人が一つのサウナの中でそれぞれの時間を過ごすというオフライン空間は非常に非日常的で価値が高くなっていると考えられます。

 

こうした時代背景の中で「ウェルビーイング」、「マインドフルネス」という言葉が語られるようになり、サウナやヨガ等の心と身体を両方豊かにするアクティビティが普及してきました。辞書で2つの意味を引くと以下がでてきます。(weblio辞書より)

 

ウエル‐ビーイング【well-being】

①幸福。安寧

②身体的・精神的社会的良好な状態

 

マインドフルネス【mindfulness】

今この瞬間自身精神状態深く意識を向けること。またそのために行われる瞑想

 

どちらも精神状態のあり方に目を向けているということが大きな特徴であり、己の精神と向き合う時間を作ることで幸福な状態であろうとするメンタリティです。これは古来日本文化の中にある「禅」の考え方に近いと言われています。禅は「心が動揺することのなくなった状態」を指します。

サウナという静の空間の中で身体の疲労を回復させつつ、仕事やSNSが届かない場所でひたすらに己の精神と向き合う時間。これは正にウェルビーイングやマインドフルネス、そして禅の心に通ずるものであり、現代人が今求めているものなのかもしれません。時間や情報に日々追われる現代人にとっては、能動的に自身と向き合う時間を確保するということがライフスタイルの一部として定着してきているのです。まだサウナをライフスタイルに取り入れていない読者の方はぜひ一度試していただくのはいかがでしょうか。

 

KGW magazineでは今後もサウナに関わらず、様々なライフスタイルをご紹介していきますので、お楽しみに。