アップサイクルとは
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アップサイクル(Upcycle)という言葉をご存じでしょうか?
使えなくなったものや不要になったものに手を加えて新たな価値を生み出すことを指します。いまアパレル業界を中心にアップサイクルから生まれたプロダクトやブランドが多く生み出され始めています。
アップサイクル、リサイクル、ダウンサイクルの違い
リサイクル(Recycle)は一度使われた製品を素材レベルに分解し、新たな製品として再利用することを指すことが多いのに対し、アップサイクルは(Upcycle)は使わなくなった製品をそのまま利用して、新たな製品に生まれ変わらせ価値を生み出す/高めることを指します。
アップサイクルの反対にダウンサイクル(Downcycle)があります。価値をダウンさせることによる再利用です。例えば、不要になったタオルや服を雑巾や布巾として再利用することなどです。
アップサイクルの重要性
ファストファッションが世の中に浸透した結果、大量生産・大量廃棄が深刻な問題になっています。大量生産してもその半分は余剰在庫になり、大量廃棄される量はおよそ年間100万トンにも及ぶと言われています。100万トン=東京タワー250本分です。
アップサイクルは不用品を使うことで原材料の調達や加工の際にかかる環境負荷を軽減できる点や、捨てられてしまう在庫を利用することで処分の際に発生する温室効果ガスを削減できる点でサステナブルな取り組みです。また、アップサイクルは不用品をそのままデザインとして取り込むため回収時点でのダメージ具合や、洗浄する過程での色落ち具合によって商品が1つ1つ個性を持っている点でファッション性も高い点が魅力的です。
アップサイクルの事例
アップサイクルを実施しているブランドとその取り組みを紹介していきたいと思います。
FREITAG (フライターグ)
アップサイクルの最も有名な企業はFREITAGではないでしょうか。彼らは使い古されたトラックタープ(トラックの覆い)、廃棄された自転車のインナーチューブ、シートベルトをアップサイクルしてメッセンジャーバッグを作り出します。これらの素材は丈夫で耐水性に優れていることから機能面でも優れている点も魅力的です。
(出典 - https://www.freitag.ch/ja )
MOTHERHOUSE (マザーハウス)
「途上国から世界に通用するブランドをつくる。」というコンセプトを掲げるエシカルブランドです。バッグやキーケースなどの商品を中心としたラインナップで、バングラディシュやネパール、インドネシアの地域ごとの魅力的な製品をその国の労働環境を整えながら生産しています。アップサイクルのブランドラインとして、デッドストックの商品と回収した製品を組み合わせてアップサイクルする「RINNE」(リンネ)があります。
(出典 - https://www.mother-house.jp/event-campaign/RINNE/)
BEAMS COUTURE (ビームスクチュール)
こちらは皆さんご存じのセレクトショップBEAMSからアップサイクルのブランドが誕生しています。倉庫に眠っているストックを手作業のリメイクを施すことで新たなプロダクトに生まれ変わらせています。国内外のアパレルブランドやZiplocなどのファッション以外のブランドとのコラボ商品も話題です。
(出典 - http://soen.tokyo/fashion/news/ziplocbeams200129.html)
commpost (コンポスト)
こちらもセレクトショップのURBAN RESEARCHから生まれたアップサイクルのブランドです。傷や汚れで販売できずに廃棄していた衣類を使ってバッグやスマホケースなどを作り出しています。commpostは共有、共同、常識、良識を意味する「common (sense)」と郵便・提示する・標柱を意味する「post」を組み合わせた造語です。
(出典 - https://www.urban-research.co.jp/special/commpost/)
NEWSED (ニューズド)
New + Usedがブランド名の由来となっているアップサイクルブランドです。シートベルトの素材を洗浄して素材として使用した蝶ネクタイ、革製品工場から出るレザーの端材から作られたスマホケースなどアパレルに限らず様々なアップサイクルの製品を取り扱っています。
(出典 - https://newsed.jp/products/products003/)
KGW Redye (ケージ−ダブルリダイ)
KGW magazineを運営するケンゴウエストも、染屋として100年の歴史を持つ京都紋付との提携により服の染め替えサービス「KGW Redye」を提供しています。最も黒に近い黒として世界からも高い評価を受ける黒染により、シミの付いたお気に入りの服を蘇らせるだけでなく、非常にキレイな黒の服にアップサイクルすることが期待できます。
服を長く愛しましょう
アパレルブランドにとってアップサイクルは、環境問題への取り組みをデザインを通して伝えられる非常に有効な手段だと考えられます。
アパレル業界の大量廃棄が及ぼす深刻な環境負荷の問題は、ブランド側だけの責任ではなく消費者である我々の責任でもあります。大量生産を生み出す背景にあるのは、我々消費者が服を短いサイクルで大量に購買しては廃棄するからです。
まずは消費者である我々自身が一度買った洋服を長く愛すこと。着れなくなったらアップサイクルやリサイクルの選択肢を考えることです。消費者の意識が変わればブランドも変わり、ゆくゆくはアパレル産業全体が変わります。まずは自分の意識から少しづつ変えていきませんか?